カルテを記入するナース

あなたは、糖尿病のインスリン注射は痛いと思っていませんか。糖尿病は、治療で悪化が防げますし、インスリン治療は血糖値をコントロールするために有効な治療法です。

今回は、インスリンの6つの種類と使い分けのポイントをお伝えします。



糖尿病治療へ!6種類のインスリンと4つの副作用


1)インスリンとは何か

私たちは、活動するために食事をします。食品の中でも、穀類(米・小麦・そばなど)や芋類(さつまいも・じゃがいも・里芋など)には、炭水化物が多く含まれています。

炭水化物は胃や腸で消化されてブドウ糖となり、血管の中に溶け込みます。血管の中に溶け込んだブドウ糖は、全身に運ばれて細胞のエネルギーになるために取り込まれます。

この時に働くのが、「インスリン」というホルモンです。

血液の中にブドウ糖がたくさんあっても、インスリンが働かないとブドウ糖が細胞に取り込まれずに、細胞はエネルギー不足になってしまいます。

このように、インスリンは血液中のブドウ糖を代謝する(血糖を下げる)働きをします。インスリンが働かずに、血管内にブドウ糖があふれている状態が糖尿病です。

2)インスリン注射が必要な5つのケース

インスリンは、膵臓(すいぞう)の膵島(すいとう:ランゲルハンス島)という部分から分泌されます。

自分の身体(膵島)からインスリンが必要な量が分泌されないか、インスリンの働きが弱い場合には、薬剤の「インスリン」を注射して補う必要があります。

(1)1型糖尿病

生まれつき膵臓の機能が悪いなどで、インスリンを分泌する能力が低下している場合は、インスリン注射をする必要があります。

子供の頃から発症することが多いタイプの糖尿病です。

(2)2型糖尿病

いわゆる成人病(生活習慣病)としての糖尿病です。

食事として摂るエネルギーのほうが多すぎると、身体(膵島)は常にインスリンを分泌しなければならずに、疲れてしまいます。

やがて、血管内のブドウ糖を処理しきれずに高血糖(糖尿病)の状態になってしまいます。

(3)薬剤性高血糖

治療のための薬の副作用で、高血糖になりインスリン注射が必要になる場合があります。その場合は、原因となった薬を止めたり変更したりすると、インスリン注射が不要になることがあります。

(4)感染性高血糖

ウイルスや細菌の感染により、インスリン注射が必要となる場合があります。

(5)ガンや外傷による高血糖

肝臓や膵臓にガンや外傷による障害がおこると、インスリン注射が必要になる場合があります。

Doctor talking to his female senior patient

3)インスリンの6つの種類

(1)超速効型インスリン(1日に3~4回注射)

商品名:ノボラピット・アピドラ

効果が出始める時間:10~20分

作用持続時間:3~5時間

(2)速効型インスリン(1日に2~3回注射)

商品名:ノボリンR

効果が出始める時間:約30分

作用持続時間:約8時間

(3)中間型インスリン(1日に1~2回注射)

商品名:ノボリンN

効果が出始める時間:約1時間半

作用持続時間:約24時間

(4)混合型インスリン(1日に1~2回注射)

商品名:ノボラピット30

効果が出始める時間:約30分

作用持続時間:約24時間

(5)2相性超速効型インスリン(1日に1~2回注射)

商品名:ノボリン30R・イノレット30R

効果が出始める時間:10~20分

作用持続時間:約24時間

(6)持効型溶解インスリン(1日に1回注射)

商品名:トレシーバ・レミベル・ランタス

効果が出始める時間:1~2時間

作用持続時間:24時間

4)それぞれのインスリンの4つの副作用

(1)低血糖

インスリン治療をしていて最も起こりやすい副作用は、低血糖です。低血糖とは、血液中のブドウ糖の量が正常値(70~80)以下になってしまう状態です。

低血糖になると次のような症状が現れます。

・血糖値70以下:空腹感・あくび

・血糖値50以下:無気力・だるさ

・血糖値40以下:ふるえ・冷汗・動悸(脈が速くなる)

・血糖値30以下:意識を失う・異常な行動

・血糖値20以下:けいれん・こん睡

低血糖の状態は、命にかかわりますので早期に解消するためには、糖分を補って血糖値を上げる必要があります。

インスリン治療の時の低血糖には、砂糖よりもブドウ糖をとるほうが効果的です。医師に、インスリン注射と一緒にブドウ糖も処方してもらいましょう。

(2)インスリンアレルギー

インスリン注射する部分が、かゆくなったり赤くなったりする場合があります。インスリンの薬剤によるアレルギーが考えられるので、医師に相談しましょう。

同成分の違う製品にすると、解消する場合があります。

(3)インスリン抗体

まれにインスリン製剤に抗体という、アレルギーの反応物質を身体の中で作ってしまう人がいます。この場合、正しくインスリン注射をしていても、低血糖や高血糖を繰り返してしまう場合があるので、危険です。

医師に相談して、製品の変更や治療方法の変更が必要になる場合があります。

(4)インスリンによる皮膚変化

インスリン注射をする皮膚が、膨らんだりへこんだりする状態です。インスリンを注射する場所を少しずつずらすことで防ぐことができます。

インスリン注射をする場所の皮膚に変化を感じたら、医師に相談しましょう。

診察を行う医師

5)インスリン治療の2つの期待できる効能

(1)血糖値のコントロール

血糖値が高い状態が続くと、全身の血管や細胞に悪い影響(糖毒性)があります。血糖値が高くなると、意識を失ったりこん睡状態になったりして、命にかかわる場合もあります。

インスリン注射により、速やかに血糖値をコントロールすれば、身体への悪影響を速やかに回避できます。

(2)合併症の予防

血糖値が高くなる糖尿病には、糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症・糖尿病性神経障害という3大合併症があります。

糖尿病性腎症では、人工透析が必要になることがあります。糖尿病性網膜症では、失明の危険があります。

糖尿病性神経障害では、足の指などがしびれたり痛みを感じにくくなったりします。糖尿病になると、免疫力が弱くなりケガが治りにくくなります。

そのため、足のケガなどが治らずに、足を切断しなければいけないという状況になる場合があります。他にも、高血圧・高脂血症・骨そしょう症・痛風・うつ病・認知症になりやすくなることが分かっています。

6)インスリン治療の2つの注意点

(1)規則正しい生活

インスリン注射をしているからといって、好きなものを好きなだけ食べていてはいけません。必要な量の食事を食べて、運動量を増やすように心がけるなどの生活が必要です。

(2)インスリン注射の特徴を知る

自分の使っているインスリン注射の、作用する時間や効果が持続する時間を知っておきましょう。それにより、注射する時間や食事する時間をコントロールして、低血糖になる危険性を防ぐことができます。

7)最新のインスリン治療とは

以前は、飲み薬の糖尿病薬が効かなくなったらインスリン注射をするという治療法でした。

飲み薬とインスリン製剤の研究開発により、飲み薬も続けながら持効溶解型のインスリン注射を1日に1回打つ、という治療法も行われます。

8)インスリン治療前に未然にできる3つの予防ポイント

(1)腹八分の食事

お酒の飲みすぎ、高カロリーの食事などで、糖尿病になりやすくなります。野菜の多い食事を心がけて、腹八分の食事量にしましょう。

(2)適度な運動

日常生活の中で、なるべく歩く量を増やしましょう。

通勤や外出の時には階段を使う、1駅前で降りて歩くなどをすると、特別な運動をする時間を作らなくても運動量が増えます。

(3)過度のストレスを避ける

過度のストレスにより、暴飲暴食をしたりインスリンの分泌量が減ったりして、糖尿病になりやすくなる可能性があります。

ゆっくりお風呂に入る、ゆっくり寝るなどして、ストレスを溜めないようにしましょう。



今回のまとめ

1)インスリンとは、血糖を下げる働きをするホルモンです。

2)インスリン注射が必要なケースは、糖尿病・薬の副作用・感染・膵臓のガンや外傷です。

3)インスリンの種類は、作用する時間によりいろいろな製剤があります。

4)それぞれのインスリンの副作用は、低血糖・インスリンアレルギー・皮膚の変化です。

5)インスリン治療の期待できる効能とは、血糖値のコントロール・合併症の予防です。

6)インスリン治療の注意点は、規則正しい生活・インスリン注射の特徴を知ることです。

7)最新のインスリン治療は、インスリン注射と飲み薬の併用です。

8)インスリン治療前に未然にできる予防ポイントは、腹八分の食事・適度な運動・過度のストレスを避けることです。

以上が今回の記事の内容となります。今回の記事で、糖尿病でインスリン治療をする方の不安が少なくなれば幸いです