診察を行う医師

インスリン療法の注射がこわい、インスリンの単位ってよく分からない、と感じている方はいませんか。薬剤の開発や治療法の進歩で、糖尿病のインスリン療法は以前より簡単になりました。

今回は、インスリンの単位の解説と、種類や副作用についてお伝えします。






インスリンの単位徹底解説!種類と副作用とは


1)インスリンとは何か

食事をすると、食べ物は消化されて血液で全身に運ばれます。糖分はブドウ糖に分解されて血液中を流れていますが、そのままでは細胞はブドウ糖をエネルギーとして使えません。

細胞がブドウ糖を取り込むために、必要なホルモンが「インスリン」です。インスリンは膵臓の膵島(ランゲルハンス島)のβ細胞から作り出されます。

2)インスリンが必要な4つのケース

(1)生まれつきインスリンを分泌する力が弱いケース

生まれつきインスリンをつくる機能が低下している場合、インスリン注射が必要です。このケースは、子供の頃に糖尿病を発症します。

(2)ケガで膵臓が弱ったケース

事故などで、腹部や背部を損傷して膵臓を傷つけた場合、その後インスリンを分泌する能力が低下することがあります。

(3)ガンのケース

膵臓や肝臓にガンができて、インスリンを分泌する量が減ったり、肝臓がブドウ糖を蓄えておくことが出来なくなったりした場合に、インスリン注射が必要になることがあります。

(4)生活習慣病のケース

肥満や動脈硬化で、膵臓がインスリンを分泌する量が不足したり、常にインスリンを分泌することで膵臓が疲れてしまったりすると、インスリン注射が必要になります。

3)インスリンの5つの種類

インスリン注射には、効き目が続く時間(長さ)によっていろいろな種類があります。食事をすると次第に血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高くなり、食後2時間程度で最も高い値となります。

インスリンを注射する時には、食後の血糖値のピークに合わせてインスリンの種類を決定します。

(1)超速効型インスリン

商品名:アピドラ・ノボラピット

作用発現時間:10~20分

作用持続時間:3~5時間

特徴

作用発現時間を見て分かるように、このインスリンは注射するとすぐに効果が出てきます。食事後に血糖値が上がるまでに時間がかかるので、このインスリンを注射する場合には、食事をする直前に注射します。

作用持続時間が短いので、食事の度に注射して血糖値を抑えます。

(2)速効型インスリン

商品名:ヒューマリンR・ノボリンR・ペンフィルR

作用発現時間:30~1時間

作用持続時間:5~8時間

特徴

1番古くからあるタイプのインスリンで、レギュラーインスリンといわれます。作用発現時間から、食事の30分くらい前に注射します。

(3)持効型溶解インスリン

商品名:ランタス・レミベル

作用発現時間:1~2時間

作用持続時間:24時間以上

特徴

他のインスリンは作用の効果が最大となる時間がありますが、このインスリンは24時間を通してダラダラと効くタイプです。

ヒトの身体でも、食事と関係なくインスリンが分泌されている基礎分泌というものがあり、それと同じような作用をするインスリンです。

(4)中間型インスリン

商品名:ヒューマリンN・ノボリンN・ペンフィルN・イノレットN

作用発現時間:30~3時間

作用持続時間:18~24時間

特徴

24時間効果がありますが、注射後に次第に作用が強くなってきて2~12時間(製品による)で最大の効果を発揮して、次第に弱まっていきます。

1日に1回または2回、注射します。

(5)混合型インスリン

商品名:ノボリン30R・ノボラピット30ミックス・ペンフィル10R~50R

作用発現時間:10分~2時間(製品による)

作用持続時間:18~24時間

特徴

超速効型や速効型インスリンと中間型インスリンを組み合わせた製剤です。

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4)インスリンの単位の解説

(1)インスリンの単位の背景

インスリンは他の注射薬と違い、「1g」「2g」ではなく「1単位」「2単位」という単位で測ります。

インスリンが1921年に発見された当初は、薬としてインスリンを作るために、牛や豚の膵臓を大量に使いインスリンを抽出していました。

そのため、製品の効果が安定せず、同じグラム数でも人体に注射をした際の効果にバラつきがありました。

そのバラつきをそろえるために、「24時間絶食させたウサギ(体重2kg)を3時間以内にケイレンさせる量」を単位の基準としていました。

(2)インスリンの国際基準

インスリンの最初の国際基準は、1925年に1ml中に8単位と定めたものです。

現在はゲノム解析により、ヒトのインスリンの遺伝子を組み込んだ大腸菌や酵母菌によって、安定的に大量にインスリン製剤を作れるようになりました。

現在のインスリン製剤は1mgを26単位とすると、1単位に含まれるインスリンの量は0.0353mgとなります。

1単位のインスリンで下がる血糖値は10~80mg/dlと、体質やインスリン製剤により幅があります。

5)それぞれのインスリンの3つの副作用

(1)低血糖

低血糖は、全てのインスリン注射で起こる副作用です。低血糖は早期に改善しないと、意識の低下を起こすなど命にかかわる場合があります。

(2)インスリンアレルギー

まれに身体の中でインスリン抗体という物質を作り、インスリン注射の効きが悪くなってしまう場合があります。

(3)皮膚障害

身体の同じ部位に注射を続けることで、皮膚が固くなったり膨らんだりします。注射を打つ場所をずらせば、予防できます。

6)インスリン治療の3つの期待できる効能

(1)糖尿病の合併症を抑える

糖尿病の早期よりインスリン療法を行うことで、糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症・糖尿病性神経障害を防ぐことができます。

(2)自分の膵臓を休ませる

インスリンを分泌し続けて疲れた膵臓を休ませることで、膵臓のインスリン分泌能力を取り戻す場合があります。

(3)動脈硬化・心筋梗塞・頻尿の抑制

内服治療だけで血糖値が高い状態が続くと、動脈硬化が進み心筋梗塞などの重大な病気を起こします。血糖が高いと喉が渇き飲水量が増えて、トイレの回数も増えます。

これらの病気や生活上の問題を、インスリン療法で抑えられます。

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7)インスリン治療の4つの注意点

(1)インスリンの投与量(単位数)を守る

低血糖や高血糖を防ぐために、医師から指示されたインスリンの投与量(単位数)を守りましょう。

(2)食事量のバラつきを抑える

できるだけ毎日同じ量の食事を摂りましょう。必ずしも3食を同じ量にする必要はありません。ただし、昨日は朝食抜き、今日は昼食抜きなどでは、血糖値のコントロールが悪くなってしまいます。

(3)食事時間のバラつきを抑える

できるだけ同じ時間に食事を摂るようにしましょう。インスリン製剤の作用のピーク時間と、食後の血糖値のピーク時間がずれると、低血糖を起こす場合があります。

(4)急激な運動を避ける

運動療法は大切ですが、少しずつ運動量を増やしましょう。

8)最新のインスリン治療

次の3つの治療法は、いずれも健康保険の適応です。

(1)インスリン療法の早期開始

インスリン製剤の種類が増えることや、ペン型の注射器具の開発により、インスリン療法は簡単になりました。

早期にインスリン療法を開始することで、糖尿病の合併症を防げます。

どのタイプのインスリン製剤を使い1日に何回注射するかは、ライフスタイルや血糖値の状態により医師と相談して決めます。

インスリンを注射する器具には、ペン型とダイヤル型があります。

(2)BOT療法

内服治療と持効型溶解インスリンを1日に1回注射する治療法です。インスリンを注射する時間は、朝か夕方~寝る前など、その人の生活に合わせて決められます。

(3)インスリンポンプ療法

手のひらに載るくらいの小さなポンプを使い、超速効型インスリンを持続的に皮膚の下に注入する治療法です。

細い針は2~3日に1回交換するだけで、1日に何回も注射する必要がありません。インスリンの分泌量が少ない場合や自分で血糖値の測定ができるなど、治療には一定の条件が必要です。

9)インスリン治療前に未然にできる5つの予防ポイント

(1)腹八分目の食事

早食い・ドカ食いをしないで、よく噛んでゆっくりと食事をしましょう。

(2)なるべく身体を動かす

階段を使う、近い距離は歩くなど、特別な運動でなくても身体を動かすと糖尿病を防げます。

(3)充分な睡眠・休息をとる

睡眠不足は身体の代謝を悪くして、血糖値を高くします。

(4)ストレスを溜めない

ストレスにより、膵臓からのインスリン分泌を悪くする可能性があります。

(5)禁煙

タバコは血行を悪くして、動脈硬化を助長します。






今回のまとめ

1)インスリンとは、細胞がブドウ糖を取り込むために必要なホルモンです。

2)インスリンが必要なケースは、生まれつきインスリンを分泌する力が弱い・ケガ・ガン・生活習慣病です。

3)インスリンの種類は、超速効型・速効型・持効型溶解・中間型・混合型です。

4)インスリンの1単位は、0.0353mgです。

5)それぞれのインスリンの副作用は、低血糖・インスリンアレルギー・皮膚障害です。

6)インスリン治療の期待できる効能は、合併症を抑える・膵臓を休ませる・動脈硬化・心筋梗塞・頻尿の抑制です。

7)インスリン治療の注意点は、投与量(単位数)を守る・食事量と食事時間のバラつきを抑える・急激な運動を避けることです。

8)最新のインスリン治療とは、インスリン療法の早期開始・BOT療法・インスリンポンプ療法です。

9)インスリン治療前に未然にできる予防ポイントは、腹八分目の食事・身体を動かす・睡眠・ストレスを溜めない・禁煙です。